茶種一覧

繊細な煎茶から香ばしいほうじ茶まで — 日本茶の多様な世界

煎茶

Sencha
不発酵中蒸しカフェイン: 中

日本茶の代表格であり、国内生産量の約6割を占める最も広く親しまれている緑茶。摘採後すぐに蒸気で蒸すことで酸化酵素の働きを止め、鮮やかな緑色と爽やかな香りを保つ。揉みの工程を経て針状に整形された茶葉は、湯を注ぐと旨味・渋味・苦味のバランスが取れた奥深い味わいを生み出す。産地や品種、摘採時期によって風味は大きく異なり、一番茶(新茶)は特に旨味が強く珍重される。

深蒸し煎茶

Fukamushi Sencha
不発酵深蒸しカフェイン: 中

通常の煎茶の2〜3倍の時間をかけて蒸すことで、茶葉の組織が細かく崩れ、濃厚な水色と丸みのある味わいが特徴となる深蒸し煎茶。静岡県の牧之原台地を中心に発展した製法で、日照量の多い産地で生じやすい渋味を蒸しの工程で和らげる。茶葉が細かいため抽出が早く、短時間で濃い緑色の茶液が得られる。渋味が少なくまろやかで飲みやすいことから、日本国内で非常に人気が高い。

玉露

Gyokuro
不発酵中蒸しカフェイン: 多

日本茶の最高峰とされる玉露は、摘採前に20日以上茶園を覆いで遮光して栽培する。遮光により茶葉中のテアニン(旨味成分)がカテキン(渋味成分)に変化するのを抑え、強い旨味と甘味、独特の覆い香(おおいか)と呼ばれる海苔のような芳香が生まれる。京都府宇治、福岡県八女、静岡県岡部が三大産地として知られる。少量の低温の湯でじっくり抽出することで、とろりとした濃密な旨味を堪能できる。

抹茶

Matcha
不発酵カフェイン: 多

抹茶は、玉露と同様に遮光栽培した茶葉(碾茶)を石臼で微粉末にしたもの。茶道の主役であり、茶筅で撹拌して茶葉そのものを丸ごと飲むため、茶葉に含まれる栄養素をすべて摂取できる。鮮やかな翠緑色、クリーミーな口当たり、濃厚な旨味と心地よい苦味が特徴。碾茶の製造では、一般的な煎茶と異なり揉みの工程がなく、蒸した後に炉で乾燥させてから茎や葉脈を取り除く。石臼で1時間にわずか40g程度しか挽けない繊細な工程を経て仕上がる。

ほうじ茶

Hojicha
不発酵カフェイン: 少

煎茶や番茶を高温で焙煎して作られるほうじ茶は、焙煎による香ばしさとすっきりした味わいが特徴。焙煎の過程でカフェインが昇華して減少するため、子供やお年寄り、就寝前にも安心して飲める。茶葉は赤褐色に変化し、水色も琥珀色になる。京都では一番茶の茎を焙じた「雁ヶ音ほうじ茶」が高級品として珍重される。食後のお茶としても親しまれ、脂っこい食事の後味をさっぱりと洗い流してくれる。

玄米茶

Genmaicha
不発酵カフェイン: 少

煎茶や番茶に炒った玄米を同量程度ブレンドした玄米茶は、お米の香ばしさと緑茶の爽やかさが調和した親しみやすい味わい。元来は茶葉を節約するために米を混ぜたのが始まりとされるが、今では独自の風味が広く愛されている。炒った米が弾けてポップコーン状になったもの(花)が混じるのも見た目の特徴。茶葉の量が相対的に少ないためカフェインが低めで、日常的に気軽に楽しめる。抹茶入り玄米茶は色味と旨味が加わり、さらにリッチな味わいになる。

かぶせ茶

Kabusecha
不発酵中蒸しカフェイン: 中

かぶせ茶は、摘採前の7〜14日間、寒冷紗などで茶園を直接覆って遮光する「かぶせ」栽培で作られる。玉露ほど長期間ではないが、遮光により旨味成分のテアニンが増加し、煎茶より甘味と旨味が強く、覆い香もほのかに感じられる。煎茶の爽やかさと玉露の旨味の中間的な性格を持ち、三重県を中心に生産されている。コストパフォーマンスに優れ、上質な旨味を手軽に楽しめる茶として評価が高い。

釜炒り茶

Kamairicha
不発酵カフェイン: 中

釜炒り茶は、蒸しではなく高温の鉄釜で茶葉を炒ることで酸化酵素を失活させる、日本では珍しい製法の緑茶。中国の緑茶製法の流れを汲み、九州北部(佐賀県嬉野、宮崎県五ヶ瀬など)で伝統的に作られてきた。釜香(かまか)と呼ばれる独特の芳ばしい香りが最大の特徴で、茶葉は蒸し製のような針状ではなく勾玉状に丸まった形をしている。すっきりとした味わいで渋味が少なく、中国茶に似た透明感のある黄金色の水色を呈する。

和紅茶

Wakocha
発酵カフェイン: 中

和紅茶は日本国内で栽培・製造される紅茶の総称。明治時代に輸出用として生産が始まったが一度衰退し、近年の国産茶多様化の流れで再び注目を集めている。やぶきた等の日本茶品種で作られることが多く、インドやスリランカの紅茶とは異なる穏やかな渋味と優しい甘味が特徴。べにふうき、べにほまれなどの紅茶向き品種で作られたものは、より華やかな香りを持つ。ストレートで飲むのに適しており、和菓子との相性も抜群。各地の茶農家が個性的な和紅茶を手がけており、産地ごとの味わいの違いを楽しめる。

萎凋煎茶

Withered Sencha
不発酵カフェイン: 中

萎凋煎茶は、摘採後に通常の煎茶製造では省略される「萎凋」の工程を加えた緑茶。萎凋とは、摘んだ茶葉をしばらく放置して水分を飛ばし、わずかに酸化を進める工程で、烏龍茶や紅茶の製造では必須の工程である。この萎凋により、煎茶にはない華やかな花香や果実香が生まれ、味わいにも柔らかさと複雑さが加わる。近年、日本各地の意欲的な茶農家が取り組んでおり、日本茶の新しい可能性を示す存在として注目されている。酸化度合いは低く抑えられ、あくまで緑茶のカテゴリに収まる。

後発酵茶

Post-fermented Tea
後発酵カフェイン: 少

後発酵茶は、茶葉を微生物の力で発酵させる日本では極めて珍しい製法の茶。代表的なものに、高知県の碁石茶(ごいしちゃ)や阿波晩茶(あわばんちゃ)、富山県のバタバタ茶などがある。碁石茶はカビ付けによる好気発酵と漬け込みによる嫌気発酵(乳酸発酵)の二段階発酵を行い、独特の酸味が特徴。阿波晩茶は乳酸発酵のみで、爽やかな酸味と軽やかな飲み口が魅力。いずれも限られた地域で少量生産される希少な茶で、日本茶の多様性を物語る文化遺産的な存在。プーアル茶と同じ後発酵茶に分類されるが、風味は大きく異なる。